「コミュニティビジネス」「評価経済」「サブスクリプション(月額課金ビジネスモデル)」などの現代的なブームに乗って、芸能人、著名人のオンラインサロンが増えてきている昨今です。
その中でも、ひときわ独自の存在感を放っているのが、お笑い芸人コンビ・オリエンタルラジオの中田敦彦さんが主宰しているオンラインサロン「PROGRESS」です。
2018年5月に開設されて以来、順当にオンラインサロンの会員数を伸ばしていますが、中田さん本人は「自分にとってオンラインサロンは、主たる収入源ではない」と語っています。
さらに、2020年5月には「新型コロナで世間の皆さんの収入が大きく減っている時期に、高額のオンラインサロンに、もはや正義を見いだせない」として、月額5,980円だった会費を、月額980円(約84%OFF)にする決定をしました。
主催者にとって安定的な事業収入を得られる旨味があるオンラインサロンを、あえて二次的・三次的な位置づけとしていますが、そこにはどのような戦略があるのでしょうか。
実業(オフライン)とリンクさせる
弊社BuildSalonの事業(オンラインサロン開設支援)に興味を持ってくださっている方の中には、「オンラインサロンだけで生計を立てる」ことを夢見ているケースも珍しくありません。
会社勤めの方が、プライベート時間を使って副業でオンラインサロンを運営するのは安心できますが、オンラインサロン運営だけで独立起業するのは、よほど確実な根拠のある戦略を組み立てていない限りはリスクが高いです。
中田さんも、芸人養成所時代に早くも舞台デビューした、エリート芸人でありながら「ひな壇芸人やコメンテーター、グルメレポートなど、スタッフが求める役割をうまく振る舞えない」「MCとして番組全体を回すのが苦手」「M-1グランプリやキングオブコントなどの賞レースで勝てない」など、様々なコンプレックスを抱えてきたようです。
それで、テレビ以外の活躍の場を模索し続けていたのです。そのひとつの形が、オリジナルアパレルブランド「幸福洗脳」です。
Tシャツや革ジャンなど、限定少量生産の高単価商品ではありますが、PROGRESSのメンバーの多くは、幸福洗脳の服を少なくとも1着は買っているといわれます。
盤石なYouTube収入の裏付け
幸福洗脳を超える、中田さんの事業収入の第一の柱は、なんといっても「YouTube大学」から得られる広告収入です。
今では中田敦彦さんは日本国内でも屈指のトップYouTuberで、YouTube広告収入だけでも月に1000万円前後は入ってきていると推定されています。「とても真似できない」と思われる方も多いでしょう。
しかし、中田さんもYouTube初期は、「嫌われる話し方」「ジョジョの奇妙な冒険で好きなスタンド」などの話をしており、再生数はほぼ伸びていませんでしたが、世界史や日本史のプレゼンテーションのわかりやすさや楽しさが受けて大ブレイクしました。
試行錯誤を重ねながら、オンラインサロンへの様々な導線を引いておく中田さんの姿勢は参考になるのではないでしょうか。
オフラインの店舗ビジネスでは、高額の初期投資が必要ですが、YouTubeで発信を始めるだけなら、初期費用はほとんどかかりません。
オンラインサロンで、月々一定の会費を継続的に出してもらうには、主催者の優秀さや能力、役立つノウハウだけでなく、「人柄」「魅力」も必須となります。
提供される情報が「役に立つかどうか」という基準にしか立脚していなければ、メンバーは早期に離脱してしまう可能性が高いです。
その点、「この人が提供する情報だからこそ、知りたい」という状態さえ作り出せれば、オンラインサロンの会員数は減りにくくなります。
YouTube動画は情報だけでなく、その情報提供者のしぐさや口調、態度や表情などの非言語的要素までまるごと伝えます。しかし、うまくハマれば、動画からの「ファン化」「サロン会員化」の流れが自然にできていくのです。