過去、ここまでオンラインサロンの社会的価値が向上した時代はなかったといえるかもしれません。
新型コロナウイルス感染症の流行が取り沙汰され、人々の行動が著しく制約された結果、オンラインコミュニケーションの価値が相対的に急浮上してきたからです。
オンラインで会議ができるシステムは、SkypeやFacebookメッセンジャー、LINEなど、10年以上前から存在していたにもかかわらず、「実際に対面しなければ、気持ちや熱量は伝わらない」と、みんなが漠然と考えていたため、特にビジネスで積極的に活用されるものではなかったのです。
しかし、新型コロナの脅威が、オンライン会議やテレワークを半ば強制的に普及させたといえます。
2011年に、オンラインサロンの元祖とされる「MG(X)」が国内で生まれ、その翌年にサロンプラットフォームの先駆けとなったSynapse(シナプス)が誕生するなど、オンラインサロン文化は、日本で花開き、発展してきました。
その文化はこれから、どのように進化していくと考えられるでしょうか。
不安な時代だからこそ、安心できるサイバー空間が求められる
オンラインサロンのいくつかある特徴の中でも、際立っているのは「閉じられたインターネット」を体現するプラットフォームである点です。
各サロンの設定するテーマやコンセプトに、あるいは主催者の個性に賛同して集まり、しかも、その賛同が「毎月課金」という強いコミットメントに裏付けられていることが、オンラインサロンの基本的な構造として成り立っています。
つまり、ほぼ共通した価値観の持ち主が集まっているフラットな空間であることが、「課金」を条件にして保証されているのです。
裏を返せば、サロン内の話し合いに関係がなく、メインテーマに特に関心のない部外者が話に割り込めず、余計な批判や「炎上」を起こされるリスクが極めて小さい点が、オンラインサロンの安心感に繋がっています。
ただでさえ、現実世界が不安で包まれているので、ネット上ぐらいは安心して楽しくコミュニケーションを取りたいという人々の潜在的欲求を、多様なオンラインサロンが受け止めている形です。
SNSを「リアルイベントの入口」にする時代の終焉
2010年代は、O2O(オーツーオー)というキーワードが象徴するように、人々は現実空間で出会うことが最重要で、オンラインコミュニケーションは「安っぽく」「仮想的で」「現実空間で出会うための手段」という位置づけが主流でした。
オンラインは、オフラインを「補助するもの」であり、「一段下」の価値しかないと、私たちは無意識に思い込んできたのかもしれません。
しかし、コロナ禍は、良くも悪くも「オンラインでしかできないこと」が存在すると、人々に気づかせるきっかけとなりました。
また、不要なオフライン会議を浮き彫りにした「功績」もあるかもしれません。
オフラインの対面コミュニケーションが万能でなく、必ずしも高い価値が付与されるわけはないと、人々の意識が改められていく2020年代には、オンラインサロンの社会的価値が徐々に向上していくに違いありません。もちろん、そこに「毎月課金」という経済的コストを費やすことに躊躇しない人々が、これからますます増えていくでしょう。